親知らずのあとしまつ(人生2度目の全身麻酔)

目次

 

はじめに

2024年5月30日。私は全身麻酔による手術を行いました。施術内容は「右埋伏歯の摘出」と「左顎腐骨の除去」です。簡単に言えば「抜歯後の親知らずのあとしまつ」で大した手術ではありません。

とはいえ、全身麻酔をする経験など人生で何度もなさそうなので備忘録として、そのいきさつから退院までの体験をしたためようと思います。

 

余談になりますが、はじめにタイトルの説明を。

私は今回が人生2度目の全身麻酔となります。

1回目は保育園年長さん(5歳?)の時だったそうです。

記憶が定かではないので、両親から伝え聞いた話になります。

まず、前提として人体構造は耳や鼻、口がすべて内部で繋がっています。

当時の私はそれなりに賢かったので、すでにそれを理解しており、自らその繋がりを確認する実験を行いました。

その方法はいたって簡単。「耳に入れたBB弾が鼻から出てくるのか?」という人体実験です。

私は保育園で保育士さんの目を盗み、とっておきのBB弾(【SSR】半透明の黄色)を耳に投入。以後、耳の聞こえが悪くなり母親に「耳に水が入った感覚があり気持ち悪い」と訴えたそうです。

大慌てで耳鼻科を受診。母親が告げられたのは「耳奥にキラリと光る何かがある」という事実でした。吸引機を耳に挿入しての摘出を試みたそうですが、私があまりにも暴れるため耳内を傷つけるリスクがあるとのことで断念。

 

後日、全身麻酔による摘出手術が行われるほどの大騒動になってしまったそうです。

この件で私が覚えているのはただひとつ。手術室にて気化麻酔を吸引する際に看護師さんとした問答です。看護師さんに「今から甘い香りがするけど何味がいい?いちごとチョコとバニラがあるよ」と問われました。(今考えれば嘘だと分かったはずですが…shit !!)

当時の私はちょってでも大人に見られたいという欲望があり、内心チョコ味がいいなと思いながら「バニラにする!」と答えたのを覚えています。

看護師さんに「今からバニラの味するよ~」と言われ一気に息を吸い込んだところからもう記憶がありません。子供の気持ちを逆手にとって嘘を憑くなんて...いつだって大人は信じられませんね。

 

今回の入院を機に当時の全身麻酔のことを両親に尋ねると「目覚めてすぐ、おねしょしたベッドの上で『アリゴリズム体操』踊ってたよ」と言われました。

知性のかけらもないですね。

今回はそんな最悪な記憶を払拭すべく、人生2度目の全身麻酔に挑んだのでした。

対戦よろしくお願いします。

実際に摘出されたBB弾(SSR)

 

悲劇の始まり

ことの発端は2023年4月末。

左奥歯に強い痛みを感じ、会社にAM半休の一報を入れて最寄りの歯科医院に向かいました。耳の裏からこめかみまで響くような鈍痛。数日前から予兆はありましたが、とうとう我慢できなくないほどの痛みになってしまいました。

長らく虫歯を患っていなかったため、治療期間も想像できず「通院が長引いたら嫌だな...」なんて考えながら待合室で呼び出しを待っていました。

診断結果は「歯茎の化膿」。その日は歯茎に少しメスを入れ、膿を除去した後に消毒をしてもらいました。虫歯でなくてよかったとホッとしたのも束の間、先生からこんなことを言われます。

「親知らずが邪魔で奥歯に汚れが溜まりやすくなってるね。親知らず全部抜いたほうがいいよ」

このときはまだ「そっか~~。じゃあ抜くか~~~」くらいの軽い気持ちで話を聞いていました。

処置を終えたのち「今日は固め食事を控えて」との言い付けにしたがって冷そばとシラス丼をいただいて午後から出社しました。

(歯の健康にはカルシウムが大切!という偏った知識でオーダー)

冷そば + シラス丼のセット

【ソバキチ 金山店】

https://tabelog.com/aichi/A2301/A230105/23053886/

 

後日、セカンドオピニオンへ

浅学な私ですが一応、厚労省の推奨する 『8020運動(「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動)』に聞き覚えがありました。先日の施術後「いや待てよ」と、「歯ってそんな簡単に抜いていいんだったっけ?」と不安になり、地元の別の歯科医を尋ねました。

結果は同じく「抜歯すべき」とのこと。今回は地元でも評価が高めの歯科医院を選んで受診したこともあり「あなたの親知らず生えきっておらず、噛み合わせに参加していないので持っていても得しない」「磨き残しで周りの歯が虫歯になる方がよろしくない」などしっかりと説得をしてもらえました。(私の親知らずに罪はないのに、かわいそうに…とは思いました)

これにて私は左右上下4本の親知らずを抜歯する覚悟を決めます。

県内でほど良く近く、大きな総合病院への紹介状を書いてもらい打倒親知らず計画?を進めていくことになるのでした。

 

はじめての抜歯、我慢できない

さて、とはいうものの仕事の忙しさにかまけて計画の方は遅々として進んでいませんでした。

しかし、先の歯茎化膿処置後も2~3カ月おきに再発を繰り返し「やはり根本解決しなければ」との思いで2023年12月にようやく重い腰を上げて総合病院の予約を入れました。

提示された抜歯計画は大きく2種類。「1泊2日の入院で4本の親知らずを一気に抜く」ものと「通院にて左右片側2本ずつ抜く」ものでした。仕事の都合上、入院は難しいと考え、後者を選択。2024年1月と2月で2本ずつ抜歯することを決めました。

 

1度目の決戦の日は1月19日。まずは歯茎の化膿があった左側の2本を抜くことにしました。午前11時からの施術でまずは下、続いて上を抜歯。これが痛いのなんのって...。歯茎化膿の件で頻繁に麻酔を注射していたせいか、左下顎部が麻酔への微耐性を取得しており、5本ほど麻酔を注射されても痛みがなくなりませんでした。ゲームだったらこんな局所的なクソ耐性、速攻でスキルリセット案件です。

抜歯後は左頬と扁桃腺がパンパンに腫れ、本当に最悪でした。

口が開かないのはまだしも、固形物をのどに通すと激痛が走りゼリー飲料を飲むのもしんどいほどでした。

息を吸うのは問題ないため、気晴らしにタバコを喫むことで何とか耐え忍んでいましたが...。

抜歯から2日後の日曜日。もう我慢できません。

この頃には腫れも多少引いており飲料や軟らかいものなら強い痛みを感じなくなっていました。

長らく固形物を食べていなかったためストレスも最高潮。これはもうアレに頼るしかありません。

そう、美味いお酒とお刺身です。

以前よりの偏見から『歯にはカルシウムが重要!』という考えを貫き、昼は煮干しラーメンで腹ごしらえ。その後ちょっと高級な板前店に直行です。

最高最高最高~~~~!!

でらにぼしらーめん(並)+味玉トッピング

【[煮干しラーメン専門店] にぼしらーめん88】

https://www.asunal.jp/shopguide/detail.php?id=119

 

[新政] Colors、[農口直彦研究所] 冬酒 無濾過生原酒 等

【[小料理酒場] 板バ酒バ魚】

https://chikamachi.com/floorguide/itabasakabasakana/

 

グラス3杯目あたりから頬の痛みも感じなくなり、抜歯の必勝法を発見した気分でした。

(店にあった新政をすべて出してもらいました。お会計は抜歯の10倍くらいしました)

 

翌日は二日酔いで最悪でしたが、その後3日程度で腫れや痛みは完全に消えました。

翌週の抜糸、翌々週の経過観察を経て左側の親知らず抜歯はこれにていったん幕引きとなります。

 

身ぎれいな身体になるはずが...

2月2日、2度目の抜歯。この日は右側上下2本の抜歯を行いました。

前回の経験である程度の流れや痛みが予測できたこと、左と違いしっかりと麻酔が効いたこと、そしてなにより必勝法を心得ていることで前回より幾分も気持ちが楽でした。

つつがなく上下の抜歯が終わり、ようやく身ぎれいな身体になるはずだったのですが...。

さらなる事件が私を待ち受けていました。

「歯牙迷入」の疑いです。

担当医によると抜歯後、歯根の一部が見当たらず、折れて体内に残ってしまった可能性があるとのことでした。

急いでCT検査室に案内され、口腔の断面図を撮影しました。

結果、あさっての方向を向いていた右下親知らずの歯根が下顎骨内に取り残されていることが判明。幸い口腔底への迷入はしていませんでした。

(口腔底とは下顎骨と喉元の空洞部のこと。ここに歯が迷入してしまうと最悪の場合、顎下部の皮膚を切開して歯を摘出することになるそうです)

また、CT画像を見たことで前回抜歯した左下の親知らず跡地が腐骨になっていることも判明しました。

(腐骨とは、抜歯の際に削った骨の残骸が本体の骨と癒着せず分離した骨の塊になってしまうことです。いわゆる体内異物となるため、のちに炎症や感染症を引き起こす可能性があります。抜歯予後の治癒能力が低いとなりやすいそうです)

腐骨の方は原因に心当たりがないでもないですが、「歯牙迷入」疑いで腐骨まで発見できたのは幸いでしたね!

担当の先生から「埋伏歯、腐骨ともに今すぐ何かが起きるわけではありませんが、いつ炎症するか分からないリスクを抱えることになるので摘出手術を行った方がよい」と伝えられ、その場で手術日程の仮押さえを行う運びとなりました。

本日で親知らずから解放されるはずだったのですが、それは叶わず...身ぎれいな身体になるのはもう少しお預けでした。

手術のことで頭がモヤモヤしていたため、この日は日本酒バーに寄って気持ちを落ち着かせてから帰ることにしました。

(CTスキャンは1回撮影で約8,000円でした。対して日本酒バーはコミコミ4,700円。お得ですね!)

[作] 雅乃智、[二兎] 雄町四十八、[三千盛] 冬にごり、[孝の司] まどろみ 等

【[純米酒専門] YATA 名古屋KITTE店 】

https://junmaishu.net/sakebar/nagoya-kitte/

 

手術準備(手術前検査・麻酔科説明)

抜歯から1月ほど経ったのち、私は手術を受ける決意をしました。施術日は2024年5月30日。全身麻酔を含む1泊2日の入院日程で31日には退院できます。

そうと決まればやるべきことは2つ。手術前検査と麻酔科によるリスク説明です。日程として、手術1カ月前程度でどちらも済ませておく必要があります。

まず、手術前検査では全身麻酔に耐えられるかどうかの診断が下されます。検査内容は採血・胸部レントゲン・肺活量・心電図の4つ。印象深かったのは肺活量の測定と心電図の検査です。

肺活量の測定ではタピオカストローよりひと回り大きめのストローを口にくわえ、子供でも楽しめそうな飛行機が描かれた画面に向かって息を吹きます。

深呼吸して息を整えた後、ゆっくり吸って深く吐く。

吐息中、看護師さんに「まだ吐けます!まだです!もっと!まだ、まだ、まだ!!」と鬼のように煽られますが、息を吹き切れば「息吐くの上手ですね~」と甘く褒めてもらえます。

直後はかなりしんどいですが、後から来る達成感と呼吸しただけで褒められるというシチュエーションがほど良く自己肯定感を高めてくれます。メンタルヘルスのコントロールに役立ちそうなので、チョコザップとかで気軽に健診できるようにしてほしいなと思いました。

また、心電図の検査では20代前半に見える女性の看護師さんが担当でした。

学校や会社の定期検診でよく見る吸盤&クリップ型の器具ではなく、電極をジェルテープで身体に貼る付けるタイプの器具でした。病院ではこちらが主流なのかもしれません。両足首、両手首、胸、脇腹にペタペタとテープを貼り、しばしの深呼吸。何事もなく計測が終わり脇腹、胸、両手首の順にテープ剥がしたところで看護師さんの手が止まります。

看護師さんに「足首のテープはご自分で剥がされますか?」と尋ねられました。どうやらテープに貼り付いたすね毛が抜けることがあるため、勝手に剥がされるのを嫌う患者さんがいるとのこと。若い女性にすね毛を抜いてもらえう機会など滅多にないのにもったいないですね。私は「ひと思いに!」と看護師さん(と自分)に喝を入れ、テープを剥がしてもらいしました。
以上で手術前検査は終了。6,000円弱の検査費用はかかりましたが、おまけで部分脱毛ができたのでよかったです。

 

次に全身麻酔の説明です。

こちらは日本麻酔科学会が制作した動画をしばらく見たのち口頭で先生からの説明がありました。

動画の方では全身麻酔の流れや使用する器具、リスクなどが事細かに解説されていました。

とりたてて書くこともありませんが、専門分野外の豆知識なんてなんぼあってもいいですからね。真面目にお話を聞いて終了になります。

 

入院前日(絶食)

全身麻酔を伴う手術では前日からの絶食が必須となります。

胃の中に食物が残っていると血圧低下(消化管に血液分布が集中するため)や呼吸器を気管に入れる際の内容物逆流で嘔吐が生じてしまう恐れがあるためです。また、肺機能を健常にするため手術から数日さかのぼって禁煙もしなければなりません。当然手術前後はアルコールの類もいっさい絶った方がよいでしょう。

ということで、入院前夜の最後の晩餐はこちら!各種ノンアルビール飲み比べセットとニコレスベープです。

このベープ後から気づいたんですが、どう見てもパッケージがTENGAだし、ロゴも形状も相まって大人のおもちゃにしか見えませんね。正直エッチです...。

また、ノンアルビールの方はキリンのグリーンズフリーが頭ひとつ抜けてビール感強かったです。発泡酒だと言われて飲んだら気づかないんじゃないかってくらい。甘味料・着色料不使用なのがいいんでしょうか?

豆腐スティックも平常時の私なら絶対選んでいませんが、食べてみたらリピートしたくなるくらい美味かった。(たぶん2度と買いませんが)

そんなこんなで手術に向けた景気づけはおしまいです。

最後の晩餐(左)、NICOLESS VAPE本体 どう見てもエッチ(右)

 

入院生活 開始

手術当日、まず午前8時45分に病院に向かいました。手術自体は午後からと聞いていましたが、事前診察や手術前は安静に過ごす必要があるため、やや早めに入院する必要があるとのことでした。

病院に着くと、すぐに口腔外科で簡単な口内診察が行われ、手の甲に手術部位を表すマーキング記号を記載されます。意味は分からないですが『NARUTO』の呪印みたいでちょっとかっこいいです。おそらく本来はメスを入れる部位にマーキングラインを入れるのですが、今回は口内手術なので手の甲に記載されたのでは?と思っています。

いずれ手の甲に似たような記号のタトゥーを入れ、街行く歯科医をビビらせたいですね。

手の甲に記載された記号 簡単に消えないインクが使用されている

事前診察が終わると病室に案内されました。今回は1泊2日の短い入院なので4人部屋を選択。私の他にもう1名、同室に入っているようでしたが、入室時には部屋にいませんでした。

病室で荷物の整理をしていると、担当の看護師さんが挨拶に来ました。手術同意書や入院誓約書など面倒な書類を提出したのち、腕に患者情報を記したリストバンドを巻かれ看護師さんは一時退室。「病衣に着替えてしばらくお待ちください」とのことでした。

言われた通り、ひとまず着替えてベッドで待機。10分ほどすると再度看護師さんがやってきて、最後の健康状態確認を行います。

身長・体重・体温・血圧・血中酸素濃度を測定。そのほか緊急連絡先や服薬中のお薬、手術歴、利き手(点滴針を刺す腕を決めるため)、宗教(輸血など宗教によっては受けられない治療があるため)等の最終確認をし、最後に退院までのスケジュールを説明してもらいました。

これでようやくひと段落、時刻は10時を過ぎた頃でした。先ほど聞いたスケジュールでは12時30分頃からの手術になるだろうとのことでしたので、2時間ほどは自由時間となります。

暇つぶしができるようKindleを持ち込んでいましたので、先輩からオススメされた『成瀬は天下を取りに行く』を読んで時間をつぶします。

宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』特設サイト | 新潮社

 

1時間ほどすると、相部屋となるもう1名が帰って来ました。入院してしばらく経つ高齢男性のようでした。ベッドに入るや否や大音量でテレビを再生し始めたので今後の入院生活に一抹の不安を感じましたが、今は安静に徹することとします。

 

12時頃、看護師さんが手術着と点滴を持って訪ねてきました。

手術着は下着の上から羽織ってくださいとのことでした。事前に視聴した麻酔科の説明動画では全裸に手術着1枚で手術が行われるとのことでしたが、確かに口内手術であれば全裸になる必要はありません。気合を入れて体毛を全剃りしてきていたのでやや肩透かしを食らった気分です。

手術着に着替え終わると点滴が繋がれます。点滴の内容は輸液と呼ばれる体力維持のための栄養剤と電解水、そこに吐き気止めを混ぜたものだそうです。ただし、手術後もかなりの量の点滴予定があるとのことで1.5ミリ程ある太めの針を刺されました。後日談ですが退院後も数日かさぶたが残るほどでかい穴が開きました。刺してしまえば痛みはないけど、刺さっているときはずっと違和感がありました。また、針の上には逆止弁と継手、マニホールド等が搭載されており点滴の同時投与や点滴チューブの取り外しができるようになっていました。

のちのち悩まされることになりますが、下図左手の点滴針は退院直前まで腕に刺された状態で過ごすこととなります。

点滴針(左)、点滴チューブ(右)の参考画像

これで手術の準備は万端。次の呼び出しが手術への最後通告になるそうです。

 

いざ、手術!

12時15分頃、その時がやって来ました。看護師さんに先導され裏口の業務用エレベーターに乗り込み手術室に向かいます。

エレベーターの扉が開くとそこにはネルフ本部の通路みたいな空間が広がっていました。まずは通路入口で待機している看護師さんに手の甲の記号をリストバンスを提示し、口頭で氏名と生年月日、手術内容を確認されます。

カルテと齟齬がないことが確認できるとその先へ進み、見えてきたのは横並びの手術室入口が3部屋分。扉は大型の自動ドアになっており、豊洲市場の荷物搬入口のような風貌です。手を汚さないためか自動ドアは足でペダルを踏むと開く方式でした。

ネルフ本部 通路のイメージ(左)、豊洲市場 地下通路(右)

私が案内されたのは3号室。手術室に入るとまた入口で氏名と生年月日、手術内容を確認されます。患者の取り違えがないよう、かなり慎重に物事が進められているのを感じました。

確認作業が完了すると、まず視界に入るのが中心のベッドです。学校の教室大の空間にポツンと置かれていました。ベッドの上にはドラマ等でよく見かけるでっかい照明。無影灯と呼ばれるらしいですが、最近だと10万ルクス以上の照度を確保できるものもあるそうです。1回でいいから自転車に付けて夜道を走ってみたいですね。

(目安としてリビングが100ルクス、教室が500ルクス程度)

また、手術室内では陽気なレゲエ?っぽい音楽がかかっていました。このテンションでで執刀されたらたまらんな?とか、手術室ってJASRACに手続きが必要なのかな?とか考えながらベッドに臥せます。

ベッドの幅は60センチ程。落ちてしまわないかちょっと不安ですが、足元にヒーターの入った毛布を掛けられた後、ベッドに縛り付けられるので問題ありません。テキパキと心電図の電極や血圧計、オキシメーター、酸素マスクが取り付けられ、点滴のジョイントに麻酔薬が繋がれます。

「ちょっと痛いかもしれませんよ~」という掛け声とともに点滴が繋がれた左腕が、ゾワゾワっと冷えていくのを感じました。体内に冷ややかな急流が流れ込むような不思議な感覚。執刀医の先生の「がんばりましょうね!」という励ましの声がBGMのレゲエと混ざり合い、おそらく10秒と経たないうちに意識がなくなったように思います。

 

次の記憶はベッドに寝た状態で運ばれる中、頭上で先生が計画通り手術が終了した旨を伝えている様子です。しかし、混濁状態だったためかはっきりと思い出せません。相槌も打てずに再び眠ってしまったと思います。

 

手術終了、我慢できない

「やだな、またこの天井だ」

病室の天井

目が覚めると15時を過ぎていました。

意識は朦朧としており、体にさまざまな器具が取り付けられているようでした。

麻酔の点滴が終わるとすぐに明瞭な意識を取り戻す人もいるそうですが、私は寝起きが悪かったみたいです。

しばらくしてようやく思考がはっきりとしてきます。体には心電図の電極が3か所、右腕にアームカバー型の血圧計、右指にはオキシメーター、そして酸素マスクが取り付けられていました。また、左腕には点滴、その先には2リットルほどの輸液が繋がっています。

担当の看護師さんから「手術が無事終わったこと」と「以後、3時間はこの状態で絶対安静にすること」が伝えられました。

 

「これからが本当の地獄だ...」

 

【15時15分】

「そろそろ30分程経ったかな」と思い時計を見ると、まだ10分も経っていない。

【15時25分】

すでに腰と首が痛い。壊滅的にベッドとの相性が悪いことに気付く。

【15時30分】

看護師さんの来訪。体温と血圧を測定する。体温は37.1度。

帰り際の看護師さんに尿意があることを伝えるが、もう30分我慢できないかと言われる。

【15時35分】

となりのおじいさんがテレビに向かって話し続けていることに気付く。

うるさい、眠れない。

【15時40分】

30分程経ったかと思ったが、時計を見るとまだ5分しか経っていない。

身体が痛いが寝返りが打てない。

となりのおじいさんが「黒いな...ハハ...真っ黒だ、一茂」と言っている。

【15時50分】

そろそろ尿意の限界が近い。おじいさんがうるさい。

【16時00分】

尿意の限界。看護師さんは来ない。

仕方なくナースコールを押して待つ。

【16時05分】

看護師さんはまだ来ない。

【16時10分】

もう無理だ...。

心電図の電極、血圧計、オキシメーター、酸素マスクを取り外し、点滴を引きずってお手洗いに向かう。

 

---

ようやくお手洗いにたどり着き、用を足すと無限におしっこが出ました。昨晩から何も飲んでないのに。いつもの膀胱に溜まった分を出すという感覚と違い、血液から直接おしっこを絞り出しているような感じ。終わりが見えず、下腹部に力を入れるとずっとおしっこが出ます。また、不思議なんですが、おしっこのにおいが『ハイチオールBクリア』の錠剤と全く同じでした。輸液がおしっこになると"こう"なんですね。

 

用を足し終え、手洗い場で口をゆすぐと吐き出した水が血で真っ赤でした。口の中がずっとベタベタで気持ちが悪かったので、お手洗いのタイミングで口を湯ゆすげたのは幸いでした。

帰路で尿瓶を持った看護師さんとすれ違い「勝手に外しちゃダメですよ~」と叱られました。危うく病室がおしっこの海になるのを防いだはずですが、素直に謝りベッドに戻ります。再び各種器具を取付けられながら、頭の中では『アリゴリズム体操』の音楽がフラッシュバックしていました。あのまま看護師さんを待ち続けた挙句、おもらししてしまったら、20年ぶりにベットの上で(怒りの?)『アリゴリズム体操』を踊るところでした。

 

その後もびっくりするぐらい時間の進みが遅く、めちゃくちゃしんどかったです。

気晴らしで何度か漫画や小説を読んでみましたが、全く集中力が続かず、毎度3ページも進まないうちに内容が理解できなくなってしまいました。

とにかく身体が痛く、気持ち悪いとも違う気分の悪さが続いていました。

途中、となりのおじいさんが「なんだあれ?なんだ?...取った!逃げた...怖い、怖い...まあええか」とか言っていて、まじでやめてくれと思いました。

17時過ぎに今度はちゃんと看護師さんに来てもらい、一時的に器具を取り外して2度目のお手洗いに行きました。

(このとき来てくれた看護師さんは担当の方ではなく、尿瓶を持って来ませんでした)

おしっこはやっぱり『ハイチオールBクリア』のにおいでした。

 

そんなこんなで最悪の3時間を乗り越え、18時頃、ようやく点滴以外の器具を取り外してもらうことができました。

また、器具を取り外した後すぐに夕食が運ばれてきました。

メニューは下記の通り。

(本当にしんどくて写真を撮る気力もありませんでした)

 

この時点でやっと飲食が解禁されましたが、とても口が動かせる状態ではなく、おかゆを2~3口いただいた後、家から持参した『inゼリー』を1袋飲んで夕食としました。

夕食を終えると一時的に点滴のジョイントを外してもらえ、束の間の自由時間を得ることができました。

 

ひとやまこえて

19時30分頃、ジョイントを繋ぎ、輸液と抗生剤の同時点滴が再開されました。

輸液はなくなるまでとのことでしたがまだ1/3以上残っており、しばらくかかることが予想できました。

ただし、ここに来てひとつの大発見がありました。

頭部、脚部をリクライニングできるベッドだったのですが、試行錯誤の結果、頭部を22度、脚部を12度起こすと比較的楽な姿勢で眠れることが分かったのです。

これが分かってからはかなり身体が楽でした。

(身体の器具が外れて体勢の自由度が上がったことも大きいですが...)

とはいえ、となりのおじいさんは依然としてやかましかったため、就寝時間の21時まで音楽を聴いて乗り切ることにしました。

(このときほどAirPodsノイキャンの偉大さを痛感した瞬間はありませんでした)

 

21時30分頃、おじいさんが静かになったので漫画を読むことにしました。

点滴も抗生剤の方は落ち切り、輸液の方もあとひといきのところまで減っていました。

読み始めたのは『女の園の星』、秀逸なシュールギャグと聞いていたので楽しみでいっぱいです。

噂通り抜群に面白く、2巻の『9時間目』ではお腹がよじれるほど爆笑して、点滴の管に血液が逆流しました。

皆さんはくれぐれも気を付けてくださいね。

「女の園の星」特設サイト

 

22時30分頃、看護師さんが落ち切った輸液と抗生剤を回収し、点滴のジョイントを外してくれました。

これで身体を繋ぎ止める枷はなくなりましたが、左腕にはまだ針が残ったままなので安心して眠ることはできません。

ですので、今夜は読みかけだった『成瀬は天下を取りに行く』を読んで朝を待つこととしました。

宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』特設サイト | 新潮社

 

また、途中何度か運動を兼ねて病棟を徘徊しましたが「夜歩きする人(私もですが)」「夜中に声をあげる人」「意味もなくナースコールを押す人」等さまざまな人が入院しているようで、看護師さんの仕事は本当に苦労が絶えないだろうなと思いました。

(限界までおしっこを我慢させられた件は許していませんが…)

 

翌朝 退院の日

翌朝6時30分頃、最後の点滴(抗生剤)の時間となりました。

昨日の経験から1時間弱で落ち切ることが分かっていたので、さほど苦にはなりませんでした。点滴が終わるとようやく点滴針から解放され、8時頃から朝食の時間となります。

朝ごはんは下記のメニューでした。

  • 全粥(350g) たいみそ付き
  • ナスのお味噌汁
  • ブロッコリーの卵あんかけ
  • 牛乳

手術翌朝の病院食

まだ咀嚼が難しく、ブロッコリーは食べられませんでしたが、そのほかのものはすべていただきました。昨日の夕食でも思いましたが「軟菜食」と称して歯ごたえのあるものを出すのはやめてくれ、と思いました。

 

朝食が終わり次第、身支度をして9時頃、口腔外科に術後経過を診せに行きます。出血は止まっており、傷口も問題ないとのことで退院の許可をもらうことができました。ちなみにとなりのおじいさんもこの日が退院日だったそうです。もう1日私の手術日程がズレていれば...と思いましたが、終わってしまえばそんなこともうどうでもいいです。

あとは事務的に処方薬の説明や忘れ物のチェックを受け、病室でお会計を済ませ、晴れて退院となります。入院・手術費はコミコミで64,350円でした。

 

身ぎれいな身体を目指して...

2024年5月31日 午前10時過ぎ、以上で入院生活は終了となります。

心身・金銭ともに消耗しましたが、得難い経験ができたうえ、将来のリスクまで取り除けたので満足です。

残すは翌週の抜糸と翌々週の経過観察。

それを終えたら晴れて身ぎれいな身体になれるはず。

そんなことを考えながら、まずは病院 最寄り駅の喫煙所で一服たしなみます。

 

この行動が次の手術レポの伏線にならないことを祈りながら...。

入院した病院 最寄駅の喫煙所

(12505文字)

 

(おわり)

 

参考文献

(すべて2024年6月1日にアクセス)

Raspberry PiとMATLABを接続してプログラムを書く

はじめに

最近苦悩していた『Raspberry PiにMATLAB(およびSimuLink)のパッケージをインストールする方法』をまとめました.
記録を残しておかないと自分が忘れてしまうので.
これが正攻法だという保証はありません.
不具合が起きた場合は自己責任でお願いします.

また,自分はRasPiもMATLABも初心者であるため,かなり事細かく記載してあります.
目次を見て「そんなの分かってるわ!」という項目があれば読み飛ばしてください.

実行環境

  • OS:Windows 10 Enterprise
  • MATLAB:R2019a
  • Tera Term:Version 4.102
  • RasPi:RaspberryPi 3 B+
  • NOOBS:Version 3.0.1
  • Display:Quimat 3.5インチタッチスクリーン
  • Keyboard:Bluetooth Keyboard Agenstar

OSのインストールと初期設定

RaspberryPiのHPからNOOBSをダウンロード(Download ZIP)
www.raspberrypi.org

NOOBSの解凍
microSDカードにNOOBSを解凍した中身をコピー
RasPiボードにmicroSDカードを挿入,電源投入(パーティションの設定に10分前後かかるかも)
Raspbianにチェックマークを入れてインストール
下の方に出ているタブで言語設定を『日本語』に設定(キーボード設定はご自由に)
タイムゾーン,キーボード設定,パスワード等の設定は任意で

Bluetooth設定

タスクバー(Menu Bar)のBluetoothアイコンをクリックして「Make Discoverable」を選択
その後もう1度Bluetoothアイコンをクリックし,「Add Device」を選択
任意のデバイスを選択し「Pair」ボタンをクリック→ペアリング設定
接続できたらタスクバー(Menu Bar)のBluetoothアイコンをクリックして「Stop Discoverable」を選択

WiFi設定

タスクバー(Menu Bar)のWiFiアイコンをクリックして任意のSSIDを選択
パスワードを入力すると一定時間後に接続が完了する

パッケージリストとファームフェアのアップデート

デスクトップ画面が開けたら左上のRasPiロゴをクリックして>アクセサリ>LXTerminal を起動
(続行しますか[y/n]と出た場合は「y」を入力してENTER)

$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get upgrade
$ sudo apt-get dist-upgrade
$ sudo rpi-update

(アップデート時間が長いのでこの間にデスクトップやMenu Barの設定をすると良い.以下の記事が参考になります)
ur0.work

日本語入力化を有効にするため,Google日本語入力の「Mozc」パッケージをインストール

$ sudo apt-get install fcitx-mozc

インストールが終わったらRasPiを再起動する

$ sudo reboot

起動後RasPiロゴをクリック>設定>Fcitx設定 を起動
タブを「全体の設定」に変更し,「入力メソッドのオンオフ」の右端が「zenkakuhankaku」になっていれば設定完了

「Quimat 3.5インチタッチスクリーンディスプレイ」のタッチパネルを有効化

以下の記事を参考にさせていただきました
karaage.hatenadiary.jp

LXTerminal を起動し,以下のコードを入力する

$ git clone https://github.com/karaage0703/raspberry-pi-setup
$ cd raspberry-pi-setup
$ ./setup-quimat_3_5_display.sh

インストールが終わったらRasPiを再起動する

$ sudo reboot

起動後,タッチ入力が可能になっているはずです

解像度の設定

RasPiロゴをクリック>設定>Raspberry Piの設定>システム>解像度を設定(R)>「CEA mode 3 720x480 60Hz 16:9」
(↑この設定に関してはお好みで)
(ついでに「オーバースキャン」のチェックボックスを「無効」にすると良い)

「OK」ボタンを押すと再起動を促されるので再起動

IPアドレスの確認

LXTerminal を起動

$ ifconfig

以下のような文字列が出てくる

eth0: flags=4163<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST>  mtu 1500
inet xxx.xxx.xxx.xxx  netmask xxx.xxx.xxx.xxx  broadcast xxx.xxx.xxx.xxx
(省略)

lo: flags=73<UP,LOOPBACK,RUNNING>  mtu 65536
(省略)

wlan0: flags=4163<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST>  mtu 1500
(省略)

この中のeth0以下にあるinet「xxx.xxx.xxx.xxx」が有線LAN(Ethernet)のIPアドレス
これ以降IPアドレスはこれを用いる

SSH接続の有効化

RasPiロゴをクリック>設定>Raspberry Piの設定>インターフェイス を開く
ここで「SSH」が有効になっていない場合は有効のタブにチェック
今後のことを考えて「カメラ」「VNC」「I2C」「Serial Port」なども有効にしておく

「OK」ボタンを押すと再起動を促されるので再起動

Tera Termのインストール

ja.osdn.net

上記のURLからTera Termをインストールする
言語などは任意設定

SSH接続

RasPiボードとPCをイーサネットケーブル(LANケーブル)で接続
(PCはWiFi接続できている状態が好ましい.WiFiモジュールが搭載されていないPCでLANポートが1つしかない場合はUSBタイプのイーサネットアダプター等を使用すると良い)
Tera Termを起動し,ホスト(T)に先ほど確認したIPアドレスを入力して「OK」
(「セキュリティ警告」が出た場合は「続行(C)」をクリック)
「ユーザー名(N)」に「pi」,「パスフレーズ(P)」に「設定したパスワード」を入力
以下のような画面が表示されたらSSH接続成功!

SSH接続ができなかった場合

RasPiをシャットダウンし,microSDカードをPCに接続する(ディスクのフォーマットを求められる場合があるがフォーマットしなくても良い)
コマンドプロンプトを開く(Windowsアイコンの上で右クリック>コマンドプロンプト)
以下のコマンドを入力

C:\User\[UserName]> type nul ssh

ローカルディスク(C:)>ユーザー>[UserName]の直下に「ssh」という名前の空ファイルが作成されているはずなので,これをmicroSDカードの「boot」へ移動
microSDカードをRasPiボードに挿入し,起動する


vimのインストール

以下の作業はすべてTera Termを用いてSSH接続したまま行うと勝手が良い

$ sudo apt-get install vim

(続行しますか[y/n]と出た場合は「y」を入力してENTER)

シンタックスハイライトと自動インデント機能の有効化
$ sudo vi /etc/vim/vimrc

“syntax on

“if has("autocmd")
“  filetype plugin indent on
“endif

上記の「"」を全て削除して以下のようにする

syntax on

if has("autocmd")
  filetype plugin indent on
endif

(Vimでは「CTRL+V」キーを押した後,「SHIFT+I」キーを押すと編集できる.「CTRL+V」→「D」で後ろの文字を1文字削除)
(「ESC」キーで編集終了,「:wq」で編集を保存して終了,「:q」で終了「:q!」で編集を削除して終了)

ユーザー名の変更

tmpユーザーを作成
$ sudo useradd -M tmp
tmpユーザーをsudoグループに追加
$ sudo gpasswd -a tmp sudo
tmpユーザーのパスワードを設定
$ sudo passwd tmp

自動ログインユーザの変更

$ sudo vim /etc/lightdm/lightdm.conf

autologin-user=pi

上記の行頭に「#」を入力して以下のようにする

#autologin-user=pi

「:wq」で編集を保存して終了

$ sudo vim /etc/systemd/system/autologin@.service

ExecStart=-/sbin/agetty --autologin pi --noclear %I $TERM

上記の「pi」を「tmp」に変更して以下のようにする

ExecStart=-/sbin/agetty --autologin tmp --noclear %I $TERM

「:wq」で編集を保存して終了し,RasPiを再起動

$ sudo reboot

起動したらログイン画面になるが,ログインせずともTera TermでSSH接続できる
Tera Termを起動する
ホスト(T)に前回と同じIPアドレスを入力して「OK」
(「セキュリティ警告」が出た場合は「続行(C)」をクリック)
「ユーザー名(N)」に「tmp」,「パスフレーズ(P)」に「tmpで設定したパスワード」を入力
「$ who 」と入力し「tmp」ユーザーしか表示されなければOK!

piユーザ名変更(新規ユーザー名は「new」)
$ sudo usermod -l new pi

「あなたはシステム管理者から通常の~」と表示されたあと「tmp」ユーザーのパスワードを求められるので「tmpで設定したパスワード」を入力

usermod と groupmod を変更し,再起動を行う
$ sudo usermod -d /home/new -m new
$ sudo groupmod -n new pi

$ sudo reboot
「new」ユーザーでログイン

起動したらログイン画面になるのでユーザー選択のタブで「new」を選択し「元piで設定したパスワード」を入力
Tera Termを起動する
ホスト(T)に前回と同じIPアドレスを入力して「OK」
(「セキュリティ警告」が出た場合は「続行(C)」をクリック)
「ユーザー名(N)」に「new」,「パスフレーズ(P)」に「元piで設定したパスワード」を入力

「new」ユーザーのパスワードを変更する
$ sudo passwd new

再び「あなたはシステム管理者から通常の~」と表示されたあと「new」ユーザーの新たなパスワードを2度入力する

自動ログインユーザの変更

以前の項で操作した箇所を再び再編集する

$ sudo vim /etc/lightdm/lightdm.conf

#autologin-user=pi

上記の行頭の「#」を削除して「pi」を「new」にする

autologin-user=new

「:wq」で編集を保存して終了

$ sudo vim /etc/systemd/system/autologin@.service

ExecStart=-/sbin/agetty --autologin tmp --noclear %I $TERM

上記の「tmp」を「new」に変更して以下のようにする

ExecStart=-/sbin/agetty --autologin new --noclear %I $TERM

「:wq」で編集を保存して終了

変更できたらRasPiを再起動する

$ sudo reboot
tmpユーザを削除

Tera Termを起動する
ホスト(T)にいつものIPアドレスを入力して「OK」
(「セキュリティ警告」が出た場合は「続行(C)」をクリック,「既存の鍵を,新しい鍵で上書きする(R)にチェックマークを入れると今後表示されなくなる」)
「ユーザー名(N)」に「new」,「パスフレーズ(P)」に「newで設定したパスワード」を入力

$ sudo userdel tmp

「new」ユーザーの新たなパスワードを2度入力し,続けて再起動する

$ sudo reboot

sudo権限の変更

2016年11月以降パスワード入力を不必要にするsudo権限の保存場所が /etc/sudoers から /etc/sudoers.d/010_pi-nopasswd へ移行したようなので,後者を編集する
(ただし, /etc/sudoers.d/010_pi-nopasswd はREADONLYファイルなので注意!)

Tera TermでSSH接続

$ sudo vi //etc/sudoers.d/010_pi-nopasswd

pi ALL=(ALL) NOPASSWD: ALL

「CTRL+V」→「SHIFT+I」で上記の「pi」を「new」に変更する

new ALL=(ALL) NOPASSWD: ALL

「ESC」キーで変更終了
READONLYファイルであるため「:w !sudo tee %」コマンドを入力し「:q!」で終了

再度sudo権限の保存場所を確認し「new ALL=(ALL) NOPASSWD: ALL」の状態であれば変更完了!

 $ sudo vi //etc/sudoers.d/010_pi-nopasswd

MATLABとの接続に必要なパッケージをインストール

一応もう1度パッケージリストと全体パッケージのアップデート

$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get upgrade

MATLABパッケージをインストール
(続行しますか[y/n]と出た場合は「y」を入力してENTER)

$ sudo apt-get install libsdl1.2-dev alsa-utils espeak x11vnc guvcview i2c-tools libi2c-dev ssmtp ntpdate git-core v4l-utils cmake
$ sudo apt-get install libnanomsg-dev
$ sudo apt-get autoremove

DNS逆引き無効化

$ sudo vi /etc/ssh/sshd_config

「CTRL+V」→「SHIFT+I」キーで編集開始
一番下の行を改行して以下の処理を追加

#Turn off revrse DNS lookup
UseDNS no

このままだと何故かSSH接続できなくなってしまうため,以下のように魔法の1行を追加する

IPQos cs0 cs0

少し上から見ると次のようになる

# Example of overriding settings on a per-user basis
#Match User anoncvs
#       X11Forwarding no
#       AllowTcpForwarding no
#       PermitTTY no
#       ForceCommand cvs server

#Turn off revrse DNS lookup
UseDNS no

IPQos cs0 cs0

以下のコードでsshを再起動しする([ ok ]と表示されたら成功)

$ sudo /etc/init.d/ssh restart

また,念のためRasPiも再起動する

$ sudo reboot

MATLABをインストール

以下のURLにアクセス

jp.mathworks.com

MathWorksのアカウントを作成

アカウントの手続きを済ませてMATLABをインストール

MATLABの起動

(ファイアフォールでブロックされた場合は「許可する(A)をクリック」)
MathWorksアカウントへのサインインを求められるので,設定したメールアドレスとパスワードを入力

MATLABの文字コードを変更

「コマンドウィンドウ」に以下の構文を入力してENTER

>>currentCharacterEncoding = slCharacterEncoding()

おそらくデフォルトは「Shift-JIS」なので以下のように返ってくる

currentCharacterEncoding = 'Shift_JIS'

このままでは不都合なので,以下のようにして「UTF-8」に変更する

>>slCharacterEncoding('UTF-8')

再度文字コードを確認し,以下のように 「'UTF-8'」と返って来れば変更完了!

 >> currentCharacterEncoding = slCharacterEncoding()

currentCharacterEncoding = 'UTF-8'

RaspberryPiのパッケージをインストール

「ホーム」のタブから「アドオン」のタブを下ろし,「ハードウェア サポート パッケージの入力」を選択
右上の検索窓に「rasberry pi」と入力し検索
以下2つのパッケージをインストールする

① MATLAB Support Package for Raspberry Pi Hardware
② Simulink Support Package for Raspberry Pi Hardware
(いずれもパッケージを選択し,インストール>インストール→承諾する→後でセットアップする)

RasPiとMATLABの接続を確認

RasPiボードとPCをイーサネットケーブル(LANケーブル)で接続
今までと同様にTera TarmでSSH接続ができることを確認
MATLABを起動
MATLABの「コマンドウィンドウ」に以下のコマンドを入力してENTER↓
(「new」はユーザー名「pass」は「new」ユーザーのパスワード)

>> mypi = raspi('xxx.xxx.xxx.xxx', 'new', 'pass');

ENTERを入力した後1分ほどすると以下のような文字列が出力される

### Updating Raspberry Pi I/O server...
### Connecting to board...
### Connected to xxx.xxx.xxx.xxx...
### Installing nanomsg Library (this might take a while)...
### Creating server folder...
### Transferring source files...
### Building MATLAB I/O server...
### Launching MATLAB I/O server...

mypi =
raspiのプロパティ:

DeviceAddress:’xxx.xxx.xxx.xxx’
Port:xxxxxx
BoardName:’Raspberry Pi 3 Model B+’
AvailableLEDs:{‘led0’}
AvailableDigitalPins:{4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27}
AvailableSPIChannels:{}
AvailableI2CBuses:{‘i2c-1’}
AvailableWebcam:{‘/dev/video10’,’/dev/video11’, ’/dev/video12’}
I2CBusSpeed:100000
Hello Worldしてみる

MATLABの「コマンドウィンドウ」に以下のコマンドを入力してENTER

>> system(rpi, 'echo Hello, World!' )

するとその下に次のように表示される

ans =
    'Hello, World!'

終わったら >> clear mypi で接続を終了する

.mファイルでHello Worldしてみる

左上の「新規作成」のタブから「スクリプト」を選択
「エディタ」に以下を入力

%mypiを削除
clear rpi
%raspiと接続
mypi = raspi('xxx.xxx.xxx.xxx', 'new', 'pass');
%echoコマンドを実行
system(rpi, 'echo Hello, World!' )
%mypiを削除して,接続を終了
clear rpi

すると「コマンドウィンドウ」に次のように表示される

ans =
    'Hello, World!'
.mファイルでLチカしてみる

左上の「新規作成」のタブから「スクリプト」を選択
「エディタ」に以下を入力

%rpiを削除
clear rpi 
%rpi接続設定
rpi = raspi('169.254.216.152', 'askb', 'Iku96820'); 

%電源LED(赤)の下のステータスLED(緑)をledとして定義
led = rpi.AvailableLEDs{1};

%Lチカforループ(1秒間隔で点滅)
>|matlab|
for i = 1:10
    writeLED(rpi, led, 0);
    pause(1);
    writeLED(rpi, led, 1);
    pause(1);
end
%LEDの制御を解放
system(rpi, 'echo "mmc0" | sudo tee /sys/class/leds/led0/trigger');
%rpiを削除
clear rpi

すると指定したLEDが1秒間隔で10回点滅するはずです

おわりに

これでSimuLinkも同様に扱えます.
SimuLinkでのLチカは以下のMATLAB公式サポートが詳しく説明してくれているので,こちらを参考にしてください.
jp.mathworks.com

やっとMATLABからRasPiを動かせるようになりました.
かなり長くなってしまいましたね.
しかし,初期設定で手間取っていたため本来の目的である「Raspberry PiとMATLABを接続」に関しては数項のみだったと思います.
初心者向けの記事になってしまいましたが,筆者が初心者なので仕方ありません.
また,これは自分用の覚書という趣旨でもありましたのであしからず...

僕より先にこれらをマスターしている方々は多々おられると思いますが,その方法をまとめてある記事が少ないような気がしましたので,今回この記事を書いた次第であります.
もっと良いやり方やRasPiとMATLABの使った活用事例を知っている方はぜひぜひご教授をお願いいたします.

最後に紹介ですが「トランジスタ技術2016年12月号」にRasPiとMATLABの使った実用例がまとめられていますので参考にしてみてください.


以上です.
今後ともよしなにお願いいたしますm(_ _)m

『リズと青い鳥』の感想と演出考察

はじめに

最初の投稿内容は映画『リズと青い鳥』の感想について.

京アニ作品の『響け!ユーフォニアム』は個人的に大好きな作品だったので,映画で続編をやるというお話を聞いた時には非常に嬉しく,さらに『聲の形』スタッフでやるというのを聞いて大変驚いた覚えがあります.

 

今回の映画はTVシリーズのその後のお話.

TVシリーズの主人公であった久美子たちは2年生になっています.また,新入生の馴染み具合から見て,部活動が落ち着いた5~6月頃からのお話でしょうか?

原作小説には明記されているのかもしれません.すいません,私はまだ読んでおりません(>_<)

このような環境の中で,TVシリーズでも1度取り上げられた鎧塚みぞれと傘木希美の関係にスポットライトを当てたスピンオフ作品となっています.

 

映画のパンフレットで山田監督がおっしゃっていますが,この作品は「途中から途中を描く物語」となっており,TVシリーズのように大きな出来事や熱い展開は見られません.

しかし,その分みぞれと希美の内面や繊細な2人の関係が色濃く表現されおり,終始じりじりと心を焦がされるような感覚に陥ります.

映画の公開日より向こう数日は胸部の低温火傷を訴える患者が全国の皮膚科に殺到したことでしょう.

 

時にはキャラクターの目線に合わせたレイアウトでそのキャラクターに没入しているかのような感覚に,時にはロングショットでキャラクター同士の関係を見守るような感覚に…

さまざまなカメラワークと被写界深度を巧みに操って,映像自体がみぞれと希美の微妙な関係性を訴えかけてくる作品となっています.

 

また,薄い擦りガラスのような世界観に西屋さんの細い線と微細で少女らしいキャラクターデザインがマッチしており,牛尾さんの繊細な劇伴がエモーショナルなストーリー性を加速させます.

個人的な意見ですが横顔の鼻頭が丸みを帯びたキャラデは非常に好みです.超かわいい.

 

初めて『聲の形』スタッフでユーフォの続編をやると聞いたときは「は?」と思いましたが,いざ劇場に足を運んでみると,この采配は絶妙であり,秀逸です.

 

このスタッフ采配がどなたの意図なのかは分かりませんが,正直エモいです.

 

目次

 

作品情報

作品の公式PVはこちらから↓

youtu.be

 

作品の公式HPはこちらから↓

liz-bluebird.com

 

さて,それではここから本編の気になったシーンを取り上げていきます.

※作品の内容についても触れるので,まだ作品を見ていない方はご注意ください.

 

 

 感想・考察

校内で繰り広げられる物語

 この作品ではほとんどの出来事が学校の中で起きます.「縣祭に行こうか」という話題や「プールに行った」という事後報告はありますが,キャラクターが校門の外に出るのは最後のみぞれと希美が下校するシーンのみとなっています.これは校内を大きな鳥かごに見立て,みぞれが鳥かごから飛び立つ様を描いたからに他なりません.ですから,最後のみぞれが自ら校門くぐり,希美と一緒に下校するシーンは非常に印象的でした.このシーンではみぞれと希美を真後から映すことで,本当は若干後ろを歩いているみぞれが希美の隣を歩いているかのように見せています.

 また,劇中で使用される校内の音は,牛尾さん自ら,舞台のモデルとなった莵道高校に足を運んで録音したものらしく,視聴者をあたかもその場にいるかような錯覚に陥らせてくれます.

 さらに,作中の音楽がキャラクターの心情を代弁しているシーンも随所に見られます.例えば冒頭の希美登場シーンでは草木が一斉にざわめき,小鳥たちのさえずりが活発的になることで,みぞれの嬉しさや気持ちの高揚などを表しているのでしょう.

 

多用される足元のカット

 この作品では主にみぞれが主体となって話が進んでいきます.

そのため,俯きがちなみぞれの視点を表現するような足元のカットが多く用いられています.また,みぞれが登場しないシーンでも足元のカットが頻繁に登場し,足の仕草などでキャラクターの個性や心情を伝えてくれます.

これは山田監督の代名詞とも言える表現方法ですよね.

 

希美の後を追うみぞれ

 この作品は,一足先に登校したみぞれが校門付近で希美を待つシーンから始まります.希美が到着すると,その背中を追うようにみぞれが歩き出します.上履きを取り出すのも,角を曲がるのも,ウォータークーラーで水を飲むのもすべて希美が先.みぞれは時折希美の振り子のように踊るポニーテールを眺めながら,みぞれの行動を全く同じようになぞって行きます.

真横から描かれたロングショットでは並んで歩く2人の間に少々距離があり,俯き姿勢で歩くみぞれが胸を張って歩く希美に,見えない糸で引っ張られているようにも見えます.

 また,このシーンでは2人の足音が強調されており,カツンカツンとメロディを奏でるように廊下に鳴り響きます.ですが,リズミカルに繰り出される2人の足音は一向に重ならず,ついにはバラバラのまま音楽室に到着してしまいます.この後も何度か2人で歩くシーンがありますが,いずれも足音は一致しません.

 

希美を見上げるみぞれ

 こちらも冒頭ですが,階段を先に上り切った希美をみぞれが見上げるシーンがあります.このとき,みぞれの視界には希美の足元しか映っていませんが,カメラは酷く傾いており,ピントもずれてぼやけています.

これは,みぞれから見て希美が手の届かないほど遠く,絶対的な存在であることを表しているのでしょう.

しかし,同時にカメラが傾いていることから,希美がいつその立場から転げ落ちてしまってもおかしくないという彼女の危うさも併せて表現していたのかもしれません.

もしくは,希美の隣を歩きたい,もっと近くにいたいというみぞれの心の表れが希美を下のフロアへ誘うような傾きに繋がったと考えることもできるでしょう.

 

希美が言った「だって…」の続き

 音楽室に到着した希美とみぞれは課題曲に選ばれた『リズと青い鳥』の話をし始めます.希美はこの曲が課題曲に選ばれたことを喜び早く本番で吹きたいと話します.この後に続く「だって…」と言う台詞.結局その続きは明かされませんが,私は「だって,(フルート(希美)とオーボエ(みぞれ)のソロパートがあるから)」だと思っています.いえ,「(リズと青い鳥が私たちに似ているから)」だったかもしれませんね.

続きはどうあれ,希美の真意に気付くことができなかったみぞれには吹奏楽部の最後の大会,つまり,みぞれが希美との唯一の繋がりだと思っている吹奏楽部の終わりを希美が自ら望んでいるように映ってしまいます.

 この場面の2人の演奏のピッチが微妙にずれていることからも2人の気持ちの食い違いが読み取れると思います.

 

触れることができないみぞれ

 作中では希美がみぞれに触れることは合っても,みぞれが希美に触れることやお互いの意思で触れ合うことはほとんどありません.序盤のみぞれが希美にもたれかかろうとするシーンは希美が寸でのところで立ち上がってしまいますし,みぞれから希美への『大好きのハグ』の要求も断られてしまいます.

そのくせ希美はさりげなくみぞれの腰に手を回していたり,頭をポンポン撫でたり,気軽にみぞれにボディタッチします.

これは希美のみぞれより少しでも優位な立場にいたいという表れであったと捉えられます.

また,軽いボディタッチなら大丈夫だけれど,真摯に向き合ってみぞれの気持ちを受け止めることができない,大事な存在だからこそ近づくのが怖いという気持ちから無意識に避けてしまっていたと見ることもできますね.

冒頭の音楽室前でお互い近づこうとしては離れるというもどかしい距離感が何とも言えないふたりの関係をよく表していたと思います.

 少し話は変わりますが,みぞれが『大好きのハグ』を断られるシーンではみぞれと希美の間に廊下の柱が立っています.これは2人の気持ちの分断を現実世界で空間的に演出していたものだと考えられます.

 

『リズと青い鳥』の原作

 作中の希美は『リズの青い鳥』の絵本しか読んでいる描写がありません.それに対してみぞれは希美から借りた絵本を読み,その後,原作の小説を何カ月もかけて読み込んでいます.このような場面からみぞれの(おそらく無自覚だと思いますが)吹奏楽に対する努力量を暗喩しているのではないでしょうか.

 また,3年生4人組が音楽室で会議をしているシーン(縣祭へ行く約束をするシーン)では,みぞれがピアノを弾いているのに対し,希美は机に向かって会計処理をしています.これもみぞれと希美の音楽的なポテンシャルの違いを暗喩しているように感じます.

 

『リズと青い鳥』の世界観

 絵本もしくは小説の中の世界観は背景が水彩調になっており,現実との区別がつきやすいようになっています.影も黒ではなく濃い色味で表現されています.

作中の極めて写実的な表現とは対照的にアニメ的な表現を多用している絵本パート.声優にも子役が抜擢されており,本業が声を当てている現実パートと比較して違和感を覚えた方もいるかもしれません.しかし,この違和感が狙いなのだとしたら...

絵本パートの主要人物である「リズ」と「少女(青い鳥)」の関係は言うまでもなく,みぞれと希美の関係そのものです.ただ,現実と違うのは,絵本では純粋な愛のみ表しているということ.その他外乱となる感情は描かれず,私たち視聴者がこの作品を観るまで思っていたみぞれと希美の関係,他の登場人物から見たみぞれと希美の関係のみが抽出されて描かれているということです.さらに言えば,みぞれと希美のこうありたいと思っている理想的な関係なのかもしれません.しかし,この絵本パートは私たち,彼女らが思うユートピアであり,現実にはもっと暗い,依存や嫉妬などの感情が渦巻いています.

そのため,作中で挿入される絵本パートは現実の物語に則しているようでそうでない,2人の感情を昇華した,現実とは乖離してた世界としてわざと抽象的な表現法を採ったのではないでしょうか.また,子役を採用したのもその純粋さを表現するためと考えれば腑に落ちると思います.

もちろん話題作りという側面も少なからずあると思いますが...

 さらに,絵本パートの劇伴には実際に吹奏楽部が演奏している『リズと青い鳥』の演奏曲が使用されており,音楽から情景が浮かんできたかのような錯覚を味合わせてくれる演出となっています.

 余談ですが,絵本パートの序盤で描かれる,リズがベッドに入った後に自分の履いていたスリッパの向きを変えるカットが個人的にとても好きです.あのような細かい仕草にキャラクターの本質が滲み出るのだと思います.

 それから,みぞれが思い浮かべる過去シーンについてです.この過去シーンではキャラクターも含め,タッチが水彩調となっています.これは過去の思い出がみぞれにとって心の支えとなっている一種の理想像,絵本の世界に近いものであるということを暗に表しているのではないでしょうか.

 

みぞれの髪を触る癖

 作中のみぞれは,返答に困ったときや気不味い時に自分の髪の毛を触る癖があります.京アニ手掛ける『氷菓』のTVシリーズ主人公の折木奉太郎も同様に,考えるときは前髪を触るという仕草が描かれていました.こういった決まった癖はキャラクターの心情を視聴者に自然に分かりやすく伝えることができるので,個人的にとても好きです.

 

リズとみぞれを重ねる

 本作の序盤ではリズとみぞれを重ねるようなシーンがいくつかあります.

  • 中学生時代,積極的にみぞれに声を掛ける希美
  • 無邪気に走る希美の背中を見るみぞれ

  →絵本の世界の落ち着いたリズと無邪気な少女(青い鳥)と重なる

  • フグに餌をあげるみぞれ

  →森の動物にパンをあげるリズ

このような摺り込みでみぞれ=リズ,希美=少女と思わせることがこの物語の大きな鍵となっています.

前々項で書いた「リズが自分のスリッパの向きを変えるカット」も冒頭の上履きをきちんと床に置き,丁寧に履くみぞれ(希美は床に放り投げている)と対になっているようで,みぞれ=リズという視点へ自然に誘導しています.

 

剣崎梨々花について

 シリーズ初登場の新1年生キャラクターで,みぞれと仲良くなりたいと願っている本作品のキーパーソンです.

このキャラクター自身や先生が「よろい...剣崎」と苗字を言い間違えるところから察するにみぞれ(苗字が鎧塚)と何かしらの関係があるのでしょう.これは以後の作品もしくは原作で明らかになるのだと思います.

 また,このキャラクターの作中での悩みは作品としてもそれなりの比重で描かれています.山田監督の前作である『聲の形』では将也と硝子の関係に焦点を当て,原作で登場する他のキャラクターのエピソードをほとんどカットしていました.しかし,本作品ではサブキャラクターである梨々花にもしっかりスポットライトを当てたことで,みぞれの心情変化や言動の動機がより明確になりストーリーがより濃厚になっていたのではないかと思います.

もしこのキャラクターがさらりと流されてしまう構成だったら,みぞれと希美の関係に亀裂が入るシナリオがもっと淡白なものになってしまっていたのではないでしょうか.

 またしても余談ですが,このキャラクターだけ専用の劇伴があります.

突然ゆで卵を取り出す不思議系,ずるいかわいい.

 

光の扱い方

 みぞれから見た希美にはほとんどのシーンで光源が一緒(主に後ろ)に描かれています.時には希美以外のキャラクターが暗く,色温度を下げるほど顕著になることも.これはやはり,みぞれにとって希美が絶対的な存在であり,未来を照らしてくれる灯火となっていることを表しているのだと考えられます.

 また,生物学室でうたた寝するみぞれに希美のフルートに反射した光が届くシーンが非常に魅力的でした.あの光はみぞれにとって道しるべのような存在であったのでしょう.また,希美視点で考えれば,いつも見てるよという心の表れであったのかもしれません.

 

被写界深度について

 山田監督と言えば,被写界深度のによる演出が有名ですよね.

今回の作品でも,みぞれ視点では希美以外をぼかし,希美しか見えていないという演出をしたり,希美視点では橋本先生がみぞれを指導シーンで,2人を強調するように見せていたりと,その力を全開で発揮しています.

 しかし,やはり今回の見どころは後半の演奏シーンだと思います.後半の演奏シーンではみぞれがその真価を発揮し,動揺する希美というのをこのぼかしで美しく表現しています.演奏中のみぞれの視点ではいずれも希美にフォーカスが絞られており,その他の人物や背景がぼんやりとしています.対して希美の視点になると,点々といろいろな場所に視点が映るものの,どこへのピントも上手く合わない状態になっています.

また,演奏後に生物学室で2人が話すシーンでは,みぞれを映す希美の視界がぼやけてしまう演出がなされています.

 これは希美の涙を表現しているからだと考えられます.これ以降も希美の直接的な泣き顔は描かれず,落ちる涙や赤い目尻のみとなっています.

 あそこまで感情的なシーンを,その感情の最中にいるキャラクターの表情なしで魅せるこの演出には度肝を抜かれました.自分の本心を素直に伝えられない希美”らしさ”があの演出から汲み取れたように思います.

 また,『大好きのハグ』のシーンで息詰まる,声にならない"音"を生々しく演じる東山さんの演技も非常に良かったです.

さらに,このシーンでみぞれが背伸びして希美にハグしているのも印象的でした.何があってもみぞれから見た希美は自分より先にいる存在なんだという思いを感じられるカットですね.

 

希美の顔

 みぞれが持つ音大のパンフレットを見て,希美が「私も音大受けようかな」というシーンでは希美を後ろ,または深く下げた顔を真横から映しており,希美の顔が見えないようになっています.

また,希美が音楽室で会計処理をしているシーンでみぞれと希美が音大に行くという話題になったシーン.みぞれの「希美が行くから行く」と言う台詞に続く,希美の「何,本気にしてるの?」という台詞でも希美の顔は映りません.

さらに顕著なのは,みぞれが「プールに誘いたい人がいる」と言った瞬間.ちょうど希美の前に人が横切り,希美の顔が見えないようになっています(次の瞬間希美は笑顔になっている).この後の「へー,誰?」と言う台詞の声のトーンの下げ方も最高でした.これは声優さんの力ですね.

キャラクターの顔を映さないというのは『聲の形』の植野が話すシーンでも使われていました.これはキャラクターの言葉と本心が一致していないという演出だと思います.

パンフレットを見るシーンで言えば,みぞれの「希美が行くなら私も行く」に続く,希美の「へ?」と言う台詞とともに希美の顔が上がり,顔全体が映るようになります.これは,みぞれの突飛な台詞に驚き,希美が思わず我に返ったと考えられますね.

 

滝先生と新山先生

 新山先生がみぞれと『リズと青い鳥』のお話をするとき「フルートとオーボエの掛け合いがリズと青い鳥を表している」と言います.

また,滝先生も「第3楽章ではフルートの問いにオーボエが応える」と言っています.

この発言はどちらもフルート(希美)=リズ,オーボエ(みぞれ)=青い鳥という順に表現されていますので,先生方はみぞれと希美の本当の位置関係を見抜いていたのかもしれませんね.

 

 

鳥で魅せる演出

 本作では鳥を演出的に取り入れているカットが随所に存在します.その中でも私が特に取り上げたいのは以下の4点です.

  • みぞれと梨々花の演奏

  夕暮れの中,みぞれと梨々花がオーボエのセッションをするシーンで窓の外に鳥が1羽が羽ばたいています.これは,みぞれは希美がいなければのびのびと羽を伸ばして演奏できるということを表しているのではないでしょうか.

また,このシーンは,

演奏中のみぞれと梨々花 → 大空を羽ばたく鳥 → 音楽室にいる希美 → 羽ばたく鳥に気が付き,すぐに目を逸らす希美

という構成になっています.

これだけの画面構成でリズと青い鳥の関係をみぞれと希美に投影し,みぞれ(青い鳥)の実力(翼)に気が付いていながら,自分のもと(鳥かご)から放してあげられない希美(リズ)の葛藤や依存心を表現できており,圧巻としか言いようがないです.

 

  • 麗奈と久美子の演奏

 麗奈と久美子が校外でみぞれと希美のパートを演奏しており,それに気付いたみぞれが廊下の窓を開けて2人の演奏を眺めるシーンです.この時,窓の外を素早い鳥が1羽すっと抜けていきます.これは夏紀が言う「力強いリズと青い鳥」をみぞれが感じ取ったことを表しているように思います.

また,みぞれが自ら窓を開けるシーンはみぞれが飛び立つときが近いということを表していたのかもしれません.

 

 『大好きのハグ』のシーンで希美がみぞれに対し「みぞれのオーボエが好き」と囁く場面があります.この直後,夕日に照らされた小鳥の影が勢いよく廊下を駆け抜けていきます.これは,希美のこの台詞が鳥かごを開ける言葉であったからではないでしょうか.

廊下に写された窓枠の影は鳥かごの支柱のようにも見え,その後小鳥が大空へ飛び立って行ったのではないかという情景が思い浮かぶ演出となっています.

 

  • 並んで舞う2羽の鳥,2人窺う青い鳥

 作品終盤,みぞれと希美が本心を打ち明けた後で,2羽の鳥がじゃれ合うように大空を舞うカットが挿入されます.

また,作品冒頭と対比して描かれている2人が音楽室に向かうシーン(このときはみぞれが音楽室を,希美が図書館を目指している)では,青い鳥が図書館にいる希美を窺い,続いて音楽室にいるみぞれのもとに飛んで行きます.

これは『リズと青い鳥』という物語に縛られない『ハッピーエンド』の結末に2人が辿り着くことができたということを表しているように感じます.

両方が鳥で両方がリズになってもいいじゃないか,行き先が違っても,別の場所にいても,それぞれの未来へ向かって一緒に頑張って行こうじゃないか,と.そんなことを訴えかけてくるシーンではないかと,私は思っています.

 それを踏まえて最後の水彩風の青色シミと赤色のシミが混ざり合っていくカットを見ると,2人の心が解け合うという表現と併せて,リズと青い鳥の同一化という演出のように見えてくるのではないでしょうか.

 

 このように,この作品では鳥のカットが数多く挿入されています.このほかにも,十字の影を鳥かごのように見立て,その中をくるくると舞う鳥の影,みぞれと希美がじゃれ合うシーンの後に挿入される並ぶ2羽の鳥,みぞれが心の中で梨々花と仲を深め始めた頃に挿入される手摺りで休む青い鳥(まだ飛び立てない青い鳥)などなど.

先に山田監督は足元でキャラクターの心情を表現すると書きましたが,この作品では鳥も同じく,その時のキャラクターの心情や関係を代弁していたのでは,と思います.

 

disjoint→joint

  『disjoint』を和訳すると『互いに素』という意味になります.作中で数学の先生が説明していますが,『互いに素』とは『共通の素因数を持たない2つの数』のことです.また,『互いに素』のにはある規則性が分かっており,『隣り合う数』は必ずこの条件を満たすそうです.

これらのことから『disjoint』がみぞれと希美の関係を表していることが分かります.周りから見ればいつも一緒にいるようですが,実は彼女らの想いは共通していません.

彼女らの足音も然り,椅子に座るタイミングも然り.冒頭にみぞれが放った「嬉しい」と言う台詞も希美には『リズと青い鳥』が課題曲に選ばれて嬉しいという意味に捉えられてしまいます.

 作中冒頭からずっと,お互いを大事に想っているもののその感情はどこか噛み合わない状態でした.

それが『大好きのハグ』を経て,別々の目標を掲げ,最後の『ハッピーアイスクリーム』でやっと一致します.

この物語を通してみぞれと希美は隣同士でなくとも共通の想いを持った自然な関係を築くことができたのだと思います.

 余談ですが,強調して描かれていた希美のポニーテールや足元のカットは『大好きのハグ』でみぞれが列挙する項目の布石だったのでしょう.

 

下校するみぞれと希美

  今までと変わらず希美の後ろを歩くみぞれですが,音楽の話をするシーンでは先に階段を降りる希美よりみぞれの方が高い位置にいるような構図になっています.

これは言うまでもなく,みぞれと希美の演奏の実力を表す構図となっています.

後ろを歩くという位置関係をキープしながらみぞれを高い位置に置く自然な構図作りにはやはりただならぬものを感じますね.

 そして,1番最後の『ハッピーアイスクリーム』のシーン.この最後の最後の場面でようやく2人の目が合い,2人の台詞が一致する場面で同時に今までバラバラだった足音の波長重なります.

1時間半の作品でようやく2人の足並みが揃ったんだなと感じる,酷く感慨深い終わり方で,視聴後の脱力感が凄まじかったのを覚えています.

 

まとめ

  書きたいことをまとめているうちにだいぶ時間がかかってしまいましたが,なんとか文字に起こすことができました.しかし,やはりこの作品には言葉にはできない台詞の間や空気間が感じられます.

日本語は世界的にもその単語数が多く,曖昧な表現を得意としている言語です.しかし,それでも足りない,もっと高次元で入り組んだ雰囲気を映像が音が間が補完し合い,キャラクターの言動をより深いものへと誘う,映像作品の在り方を考えさせられるような作品でした.

ひと言で表すならやはり『エモい』ですね.

 

何はともあれ,映画『リズと青い鳥』は非常に良い作品だったので,まだご覧になっていない方はぜひ劇場に足を運んでみてください.

この作品は劇場の音響設備があってこその作品だと思うので,騙されたと思って1度だけでも!!

 

今回は私の長い作文に付き合っていただき,本当にありがとうございました.

今後も何度か見直して,随時追記するかもしれません.

 

それではまた,機会があれば.

 

以上.

ブログ開設しました

はじめまして

今,人生で初めてブログというものを書いています.

 

「うーん,何書こうかな」なんて考えながら机に向かっていると,自分の行動が気恥ずかしくて原稿が燃え上がってしまいそうです.

 

PCで作文ができる時代に生きることができて本当に良かった.

ひと昔前だったら自室でボヤ騒ぎが起きて大変なことになるところでした.

 

さて,冗談はさておき,こちらのブログのテーマに関して少し触れます.

と言いつつも,テーマはほとんどありません.

 

自分の考えたこと,感じたこと,やったことを記録できる場ができたらいいなと思い,取り敢えずブログを開設してみました.

 

そんなのTwitterで十分じゃない?と思う方もいるかもしれませんが,いかんせん140文字という制限がやりづらくてですね...

 

また,Twitterはポッと思いついたことを書き記すツールであって,自分の考えをまとめて文章にするツールではない気がするんですよね.

 

さらに,自分の元来ものを書くのが好きという性質が相まってこのブログを開設した次第でございます.

 

 当分は内容や閲覧数などを蚊帳の外に置いておいて,続けることを目標にまったり進めて行こうと思います.

 

ですから,投稿については不定期とし,自分が何かを深く考えたとき,何かを成し遂げたときの心情や成果を体系的に記録できる媒体になったら良いなと思っております.

 

では,初回の投稿はこの辺りで.

次回の内容はもう決まっているので近いうちに投稿すると思いますが,その先はまだ未定です.

 

何とか続けられるように頑張ってみますので,何卒よろしくお願い致します.

 

以上です.